[税務調査]水増し給与などによる所得隠し40億円

 パチンコチェーン経営のガイア社とそのグループ企業が,東京国税局の税務調査により,従業員の給料の水増しや役員の個人的な支出を経費とするなどして,40億円の所得隠しがあったと指摘され,重加算税を含めて約10億円が追徴課税されることになったようです。
 各新聞社とも記事の内容はほとんど同じですので,国税当局が一罰百戒的な効果を狙って,意図的に情報を流しているのではないかと,変な勘繰りをしてしまうところです(もちろん,国税職員には厳格な守秘義務がありますから,そんなことはないのでしょうが)。

日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0902L_Z00C12A7CC0000/
↓MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120709/crm12070913130008-n1.htm

 水増し給与については,おそらくは賃金台帳を二重に作成して,従業員向けの実際の給与明細と決算・法人税申告用のものとを分けて管理していたのではないかと思いますが,実際の銀行振込額と水増しした賃金台帳の支給額に差が生じることから,そのあたりを端緒に,税務調査で発覚したのではないかと推察しますが,実態はよくわかりません。
 また,パチンコ業界は一般的に従業員の出入りが多い傾向にあるようですので,そうした業界では,かつては,退職した従業員がまだ勤務しているかのように装って,給与を水増しする例もあったのですが,今回の記事では手口の詳細は書かれておりません。
 水増しした給与をどのように使ったのか,裏金にしたのか,経営者による流用があったのかなど,気になる点は数多くありますが,残念ながら,昨日の記事は消化不良でした。

 パチンコ業界といえば,今年2月ころは,組織再編税制を利用した租税回避行為が指摘されて,多くの企業は修正申告に応じたというニュースがありましたが,今回の税務調査による所得隠しの指摘は,その際の税務調査に起因するものなのかもしれません。
 ただ,当時の報道は,すべて社名は明かされなかったのに比較しますと,今回の報道は,やはり懲罰的な意味合いが込められているような気がします(うがった見方でしょうか)。

 実は,当職は,来週18日(水)にACFE JAPAN(日本公認不正検査士協会)の法人月例会で,『粉飾決算と税務調査』というタイトルでお話をさせていただくことになっており,その中で,架空(水増し)人件費による所得隠しと裏金作りについても触れようかと,その準備をしている最中でしたので,このタイミングでこうした事件が報じられたのも何か奇遇な感じがしています。資料の中では,

「本人確認が甘く簡単に預金口座を作れた時代ならともかく,現在では,架空・水増し人件費は,その支払処理の不自然さから,税務調査において発覚することは間違いなく,割に合わない所得隠しの手段である」
と結論づける予定でしたので,その部分は再考する必要はないようです。

【税理士 米澤 勝】