[話題]第10回青山学院会計サミット

 昨日,青山学院本多記念国際会議場で行われた「第10回青山学院会計サミット」に昨年に引き続き参加しました。5月に竣工したばかりだという会議場は,かなり急な傾斜の階段状に座席が配置され,演壇上がよく見えます。椅子の座り心地もよく,各席に電源もあり,快適でした。562名が定員だそうですが,開演15分まえっくらいには満席となったようです。
 今回のテーマは,「企業不正を巡る諸問題〜その防止と発見を目指して〜」というもので,昨年発覚した上場企業2社の不正問題に焦点を当てたものであることは,入口で配布されたリーフレットをパラっと見ただけでわかります。
 昨年通り,第1部が特別講演,第2部がパネル討論会という形式で,第1部はオリックス宮内義彦さんが,「経営者と企業統治」というテーマで話をされました。企業の時価評価について,「中長期的な観点を失う」「企業を売買の対象としてとらえる考え方」などの批判的なコメントがあって,

 第2部のパネルディスカッション。コーディネータは,第4回「公認会計士の日」大賞受賞者の八田進二教授。迎えるパネリストが豪華です。日本公認会計士協会の山崎会長,日本監査役協会の太田会長,日本内部監査協会の伏屋会長と,日本独自の三様監査である会計監査人監査,監査役監査,内部監査のそれぞれトップが一堂に会して,そこに東京証券取引所の斉藤社長と弁護士の國廣正先生が加わるのですから,八田教授がどういう進行をするのか,期待が高まります。
 各パネリストによる10分程度の報告が終わったところで,八田教授から,「オリンパス事件についてはパネリストの民さんからコメントがありましたので」と断ったうえで,大王製紙事件について,コメントが求められました。
協会でも調査中という,山崎会長のコメントは歯切れのよくないものでしたが,太田会長からは,「大王製紙,元会長に固有の問題であり,企業統治論,監査役論で取り上げるようなものではない」という明確な意見があり,討論会前の報告で,日本型企業不祥事の特徴を「先送り」「集団的無責任」「不作為」「非開示」にあると説明された國廣弁護士からは,「今まで日本にはなかったタイプの経営者不正であるが,今後も発生する可能性はある」という,気になるコメントもありました。
 次に第三者委員会,社外調査委員会について,話題が移ります。まずは八田教授から,「会計不正に対する調査を法律家に任せていいのか」「第三者委員に対する報酬を開示すべきではないか」といった問題提起があり,山崎会長からも「会計監査について事後的に言及されるのは困る」,「会計士協会として日弁連に『第三者委員会ガイドライン』の修正を申し入れる予定である」とのコメントが続きます。これに対して,ガイドラインをまとめた側の國廣弁護士からは,第三者委員会に公認会計士が委員として参加していることが多い実態や,報酬については,成功報酬にすると経営者に迎合した報告書になる恐れがあるため,時間に応じた報酬とするように推奨しているといった説明がありました。
 事件が発覚した後になって,公認会計士の監査に不作為や見落としがなかったかを問われるのは酷な話であり,報告書で「公認会計士善管注意義務違反があった」などと書かれようものなら,損害賠償請求訴訟を提起されれば,たいへん苦しい戦いになることは目に見えているわけで,第三者委員会の調査対象から会計監査を外すべきだというのは,公認会計士からは,当然の要求なのでしょう。
 1時間15分程度のディスカッションでしたが,國廣弁護士の「行為規範と評価規範」論など,興味深い話題も多く,最後まで楽しませていただきました。

 一つだけ不満だったのは,筆者も所属している日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)の関係者が,パネリストの中にいなかったことでした。おまけに,國廣弁護士からは,「不正検査士」ではなく「不正調査士」と呼ばれてしまいましたし。公認不正検査士の役割が何であるかも含めて,まだまだ知名度が不足しているようです。

【税理士 米澤 勝】