『検察事務官』が人気就職先…「司法試験を受けなくても副検事や検事になれる」

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100125/trd1001251222003-n1.htm

落合先生のエントリー経由なのですが,検察事務官が就職先として注目されているとの記事を見て,若干気になった点がありましたので,簡単にコメントします。

この記事の中で,検察事務官の志望理由として,ある男子学生は「司法試験を受けなくても、選考試験で将来副検事や検事になれる可能性があるのが、他の職種にないところ。(略)」と述べています。しかし,この選考試験が結構大変らしいのです(以下は,私が4,5年前の修習生時代,実際に副検事及び検事になられた方の話しを基に記載しています。)。

前提として,どのような過程を経れば副検事,さらには検事になれるのかということですが,まず,副検事になるには検察事務官を3年以上経験した後,所定の試験を受けて合格すればいいのですが(検察庁法18条2項),この試験も憲法民法・刑法・刑事訴訟法などの論文試験に合格しなければならず,結構厳しい試験のようです。

また,副検事から検事(俗に「正検事」と言います。)になるには,副検事を3年以上経験すれば一応の受験資格は得られるのですが(検察庁法18条3項参照),(正)検事になるための試験は更に過酷で,憲法民法・刑法・商法・刑事訴訟法の論文試験の他,修習生が卒業試験で受ける2回試験の検察科目と同様の終局処分起案(教材用に編集された捜査記録から,起訴すべきかどうか,起訴するとしていかなる公訴事実・犯罪名で起訴するか)を受けなければならないそうです。修習生と異なり,副検事としての業務をこなしながら,なおかつ研修所による起案指導もない状況で受験するのですから,その難易度たるや想像に難くないと思われます(なお,このような試験に合格して資格を得た検事を俗に「特任検事」と言います。)。

このように,検察事務官から副検事,さらには正検事になるには業務をこなしながらなおかつ司法試験(さらには修習生の卒業試験である2回試験)と同様の受験準備を行わなければならず,その道程は決して楽なものではありません。検察事務官を目指される方は,このようなことを頭の片隅に置いておくといいのではと思います。

(阿部憲太郎)