市有地を神社施設に無償で使用させていることが政教分離原則に反する判決…最高裁

http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012001000468.html

北海道砂川市が市有地を「空知太神社」に無償で使用させているのは憲法政教分離原則に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は20日、「特定宗教に特別の便益を提供し援助していると評価されてもやむを得ず、特権の付与にも当たる」として違憲と判断した。
竹崎博允裁判長は、宗教的施設に公有地を無償提供する是非について「施設の性格や無償提供の経過と態様、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らし判断すべきだ」と指摘。政教分離訴訟で「目的と効果」を検討してきた従来の枠組みを補完する新たな判断基準を示した。その上で「祭事など諸行事を担う氏子集団の宗教的活動を容易にした」と認定したが、「違憲状態解消には撤去や土地明け渡し以外に、合理的、現実的な手段があり得る」として市側敗訴の二審判決を破棄、審理を札幌高裁に差し戻した。

判決全文(最高裁サイト)


政教分離原則違反の最高裁判決がでるのは,1997年に出された「愛媛玉ぐし料訴訟」判決以来2例目です。従来,政教分離原則に違反しているかどうかを判断する際に「目的効果基準」というのが使われてきたと言われておりますが,同基準はある国(あるいは地方公共団体)の行った行為が憲法上の政教分離原則に違反するか否かを判断する際に利用されてきた基準です。ところが,本件の場合,市が積極的に宗教的行為を行ったわけではなく,結果的に政教分離原則に抵触する疑いのある状態になったのであることから,政教分離原則とは別の基準を定立した上で本件について判断したものと思われます(このことは判決文目的効果基準を定立したとされる津地鎮祭訴訟判決の趣旨を引用していることからも窺われます。)。その意味で本件は憲法論的に重要な判決と言えるでしょう。もっとも,本判決も津地鎮祭訴訟判決と同様,国(あるいは地方公共団体)と特定宗教との関係が普通の人から見て特定宗教に肩入れしていると言えるか否かという点を重視していることは変わらないと思われます。

また,本判決は,結果的に国(あるいは地方公共団体)が特定宗教との関係で政教分離原則に違反する状態になった場合に,違反状態を解消する最小限の方法を検討すべきであったことを指摘しています(本件では,市有地を神社施設に無償で利用させる状態になった場合に,単に利用契約を解消するのではなく,相当額の利用料を徴収するなど一般人が市有地を利用する場合と同等の負担を求める方法を検討できないか市に釈明すべきだったとしています。)。違憲状態を解消するに際して宗教団体であったとしても他の人より不利に扱われてはならないのは当然であり,このような最高裁の判断は妥当なものと思われます。

(阿部憲太郎)