[税制]消費税率引き上げの影響

 昨日から今朝にかけてのニュースは,17年ぶりの消費税率引き上げの影響を報じるニュースばかりでした。対応が間に合わず,開店時間の繰り下げや臨時休業を余儀なくされたスーパーマーケットもあったようです。
↓たとえば,首都圏の食品スーパーの記事。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ0103R_R00C14A4EB1000/

 それでも,比較的大手はまだ影響は少ないようですが,中小事業者の中には,消費税率引き上げの影響で廃業を選ぶスーパーが出ていたことが報じられました。
 ↓ たとえば産経新聞の記事。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140402/fnc14040208370002-n1.htm

 新潟市で2店舗のスーパーを経営する河治屋は,3月19日に新潟地裁に破産を申請し翌20日に破産開始決定を受けていたそうです。
自己破産申請の理由は,東京商工リサーチによると,もともと資金繰りが悪化していたところ,
電気料金の値上げに苦しんでいたうえ、使用するレジが旧式なため4月以降の消費税率変更に際し対応できず、新規の設備投資もできない状況に陥っていた。
という状況で,「消費増税関連で初の倒産」となったということです。
 ↓ 東京商工リサーチの記事。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20140401_03.html

 所得の低い層への逆進性など,消費者側に生じる問題点はよく知られているところですが,消費税は中小事業者に対しても,たいへん厳しい税です。たとえば,国税庁が毎年発表している「租税滞納状況」では,全体で1兆2,702億円の滞納税額のうち,31%超の3,960億円を消費税が占めています。この数字は税目別でトップであるのみならず,実は,地方消費税を含んでいない金額(4%分のみ)ですので,実際にはこの1.25倍の4,950億円が滞納していることになります。滞納理由は,よく言われているように「赤字でも納税義務があること」「資金繰り」などでしょうが,今回の17年ぶりの税率引き上げは,納税が難しいだけでなく,税率引き上げに対応するコスト負担も,事業者に求められることを明らかにしました。
 平成24年度の消費税の新規発生滞納額は3,180億円(地方消費税を加えると3,975億円)でしたが,税率引き上げの影響が出る平成26年度は,単純に税率8%で計算すれば,6,360億円になります。
10%への税率引き上げの前に,どうすれば滞納の新規発生を防ぐことができるか,国税庁は,消費税の適正な徴収に向けて,更なる対策が必要になっているのではないでしょうか。

【税理士 米澤 勝】