[話題]税を考える週間(11月11日から17日まで)

今月11日から17日は「税を考える週間」ということで,「キッザニア東京」には,この期間限定の「税務署パビリオン」が登場したそうです。
↓ 毎日新聞のニュースはこちら
http://mainichi.jp/select/news/20131112k0000m040049000c.html

税務大学校ではこの時期定番の公開講座が行われるため,初日の今日,国士舘大学法学部の酒井克彦教授が登壇されるというので,和光市まで出かけてきました。講義のテーマは,『租税法上の「住所」の認定をめぐる諸問題』ということで,テーマを聞いただけで,武富士事件の最高裁判決を検討するのだろうという見当はついたのですが,やはりそうでした。
税務大学校の階段教室は,昨年よりやや空席が目立った印象でしたが,酒井教授はいつものように熱のこもった講義で,民法上の「住所」概念における客観説と主幹説の対立,住所複数説と住所単数説の争いなどを紹介しながら,本題である武富士事件――レジュメではT事件となっていました――の解説に移ります。
酒井教授ご自身,いくつかの著作や論文で,本事件について見解をまとめておられますので,どのような結論に導かれるのかと聞いておりましたところ,「本日は『税を考える週間』の公開講座ということもあり,私は問題提起をして,みなさんにお考えいただきたい」とのことでした。
酒井教授の問題提起はこうです。
「住所の認定に,居住意思を入れるか否か」
武富士事件は,巨額の贈与税回避スキームが問題となり,納税者感情としては納得ができないという報道が多くみられました。そうした声を反映してか,最高裁判決でも,須藤裁判長がわざわざ補足意見を述べ,「個別否認規定がないにもかかわらず,この租税回避スキームを否認することには,やはり大きな困難を覚えざるを得ない」と書いています。
これに対し,酒井教授は,越境入学のために住民票を移しておいて,1学期が終わった段階で元の住所に戻した場合と比較して考えることを示唆します。一時的に住所を移すだけで,本来そこに居住する意思がないことが明らかな場合においても,形式上滞在日数が多いだけで,「住所」とすることが妥当なのか。かなり,武富士事件の高裁判決に近い考え方です。
さらに,武富士事件は「本来,住所の認定が争点であるべきところを,租税回避を争点としてしまった」ところに問題点があると指摘します。
酒井教授の問題提起はたいへん興味深いのですが,これにもまた,反論ができようかと思います。つまり,居住意思が客観的な徴表に基づいて判断できたとして,外国における滞在日数が年間の2分の1未満だった場合に,果たして,国税庁は「非居住者」として認めるでしょうか。たぶん,形式的に判断して認めないでしょう。また,居住意思はあるが,住民票が別の地区にある保護者の子供は,越境入学したいと思って願書を出しても,間違いなく門前払いでしょう。
ということで,「税を考える」という趣旨に照らしても,1時間25分の講義はとても有意義なものでした。

↓ 国税庁HP「税を考える週間」
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/week/index.htm
↓ 税務大学校公開講座のお知らせ
http://www.nta.go.jp/ntc/kokai/index.htm
↓ 当blogの関連記事
http://d.hatena.ne.jp/takanawa2009/20110218/1298021696

【税理士 米澤 勝】