[税制]「寡婦控除 結婚歴で差別は不公平」東京新聞社説より

 本日付の東京新聞社説では,所得税寡婦控除が非婚の親に適用されないことの不公平を取り上げています。寡婦控除の要件は,国税庁のタックスアンサーでは,こう説明されています。
 <寡婦の要件>
 寡婦とは,納税者本人が,原則としてその年の12月31日の現況で,次のいずれかに当てはまる人です。
(1) 夫と死別し,若しくは離婚した後婚姻をしていない人,又は夫の生死が明ら かでない一定の人で,扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。 この場合の子は,総所得金額等が38万円以下で,他の人の控除対象配偶者や扶 養親族となっていない人に限られます。
(2) 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人  で,合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は,扶養親族などの要 件はありません。

 その後に,(注)として,「夫とは,民法上の婚姻関係をいいます」と説明がされており,非婚の母親には適用されないことが明確に定められています。

 社説では,所得税法寡婦控除の要件が,地方公共団体による保育料や公営住宅の家賃の減免についても適用要件となっていることから,所得税,住民税といった税制面だけではなく,広範囲に非婚と既婚で差別的取扱いが行われていることを問題視しています。

 東京都新宿区,八王子市,那覇市のほか,千葉市や埼玉県朝霞市などで,非婚のひとり親にも寡婦控除があったと「みなして」保育料や市営住宅の家賃などを減免している。国の制度を動かす先取りでもあるが,多くの自治体は非婚者の親の窮状を理解しつつも踏み込めず,国の方針が出るのを待っている。
 子育てにかかわる問題は放置できない。一刻も早く非婚の親も含め,すべてのひとり親が寡婦控除の対象となるようにすべきだ(一部文章を省略しました)。

 まったくそのとおりだと思います。

 社説では触れられていませんが,男性のひとり親はどうなるのでしょう。
 「寡婦控除は夫を戦争で失い,子を抱えて困窮する女性を支えるためにできた(東京新聞社説より)」もので,昭和26年からある制度です。
 その後,「寡婦」だけ所得控除が認められていて,男性(寡夫)には認められないのは法の下の平等に反するということで,昭和56年になって「寡夫控除」も認められるようになりました。
 <寡夫の要件>
 寡夫とは,納税者本人が,原則としてその年の12月31日の現況で,次の三つの要件のすべてに当てはまる人です。
(1) 合計所得金額が500万円以下であること。
(2) 妻と死別し,若しくは離婚した後婚姻をしていないこと又は妻の生死が明ら かでない一定の人であること。
(3) 生計を一にする子がいること。
 この場合の子は,総所得金額等が38万円以下で,他の人の控除対象配偶者や 扶養親族になっていない人に限られます。

 こちらも,適用要件は寡婦よりもかなり厳しくなってはいますが,婚姻が前提であることは同じです。女性に比べ,婚姻をしないで扶養する子供を持つ男性が少ないので,東京新聞の社説では取り上げられなかったのかもしれませんが,問題点は同じだと思います。
 せっかくですから,非婚のまま親になってしまった男性にも,寡夫控除を認める改正を同時にすべきではないでしょうか。

【税理士 米澤 勝】