[税制]マイナンバー法の動向

 消費税率の引き上げが決まったことで,次なる焦点は「マイナンバー」の動向ということなのでしょうか,税理士会では,これから,マイナンバー法関連の研修が続きます。昨日は,支部主催の研修で,テーマは「情報システムから見たマイナンバーの動向と情報セキュリティ」。
 この後も,
東京税理士会研修「社会保障・税番号制度の概要〜番号法の経緯とこれから〜」
日本税務会計学会年次大会「マイナンバー法の導入に伴う税制への影響」
東京税理士会情報フォーラム「社会保障・税番号制度について」(仮題)
という感じで,毎月のように,マイナンバーをテーマにした研修が予定されています。

 とりあえず,昨日の研修を受講しての感想ですが,平成28年1月から導入ということもあってか,「決まっていない」ことの多さに驚きました。4,000億円とも5,000億円とも言われているシステム構築費用をかけて,いったい,どれだけ国民の利便性が向上するのかも,実はよくわかりません。行政の側,国税庁日本年金機構地方公共団体が効率化による恩恵を受けるのは間違いないのでしょうが,それも金額としては試算されていないようです。
 税理士としては,マイナンバー導入と同時に運用が始まる「マイ・ポータル」で集積できるクライアントの情報をどのようにして収集し,利用するのか,現行の税理士用の電子証明書マイナンバーが付与された個人番号カードの関係はどうなるのか,併存するのか,個人番号カードに一本化するのか,e-Tax利用の際の代理送信はどうなるのか,などの個別手続の情報がもっと欲しかったところですが,「これから検討する」「税理士会として要望中」のようなものばかりで,まだまだ制度として煮詰めていくのはこれからといった印象でした。

 ジュリスト8月号もまた,「マイナンバー法と実務への影響」という特集を組んでおります。

 特集冒頭の鼎談で,世論の大きな反対もなく,むしろあっさりと成立したマイナンバー法について,内閣官房審議官の向井治紀氏は,「IT化の進展」「キーワードとしての公平性」などをその理由として挙げ,日本総合研究所法務部長の大谷和子氏は「社会保障制度を支えるインフラの欠陥が相次いで露呈して高齢社会への不安を加速させたこと」「マイ・ポータルによって国民が行政を監視する仕組みへの期待」などが理由ではないかとしておられます。1980年に法改正をしておきながら,その5年後に廃止が決まったグリーン・カード制度の迷走ぶりを知っている世代の人間としては,隔世の感がありますが,21世紀に生きる私たちは,インターネットのおかげで,ID番号で管理されることに慣れてしまい,抵抗感を持たなくなっているということでしょうか。

【税理士 米澤 勝】