[税制]消費税総額表示義務の特例措置

 安部首相の消費税率引き上げ決断を受けて,書店の店頭では「消費税8%」にどう対応するかといった書籍が平積みされ,会計ソフトはバージョンアップ商戦真っ盛りといった感じですが,そんな折,国税庁は10月3日に,「総額表示義務の特例措置に関する事例集」を発表しました。
↓ 国税庁HP
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/pdf/sogakuhyojigimu.pdf

 商品の価格表示については,消費税法第63条の規定により,総額表示(消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示すること)によることとされてきました。これを今般の税率引き上げに際し,特例措置として,消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為等の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)第10条によって,誤認防止措置が講じられている場合に限って,税込価格の表示を要しないことを定めたことから,事例を公開したもののようです。
 新聞報道などでも,大手の小売業者が,税抜表示を採用するか,税込表示のままにするかといったことが報道されていたり,値上げではなく消費税率が上がったための価格変更であることを強調したいために税抜表示を認めるべきだといった論調があったりと,消費税導入時のような混乱が再び引き起こされているようです。
 消費者にとっては,総額(税込)表示の方がわかりやすいのは当然であり(法律もそう規定しています),今回の特例措置は販売側に配慮しただけのように思えます。消費税転嫁対策特別措置法が失効する平成29年3月31日まで,混乱が続くかもしれません。
 解説されている事例は,「税抜価格のみの表示」が4事例,「旧税率に基づく税込価格の表示」と「新税率に基づく税込価格の表示」がそれぞれ3事例,合わせて10事例に,FAQが4項目です。事例の中身はともかく,強調されているのは以下の点です。

 誤認防止措置としての表示は,消費者が商品等を選択する際に,明瞭に認識できる方法で行う必要があります。 したがって,店内のレジ周辺だけ(商品カタログの申込用紙だけ,インターネットのウェブページにおける決済画面だけ)で行われているなどよって,消費者が商品を選択する際に,表示価格が税込価格でないことを認識できない場合には,誤認防止措置が講じられていることにはなりません。
 事例集を公開してまで説明するような内容かと首をひねるものも中にはありますが,販売業者のガイドライン的な役割を果たすことはできそうです。

 なお,小学生の息子から「消費税率が上がったらどうなるの?」と訊かれて,「いま,157円で買えるカードが,162円出さないと買えなくなるってこと」と説明したところ,「じゃあ,お年玉もらったら,消費税が上がる前に買わなきゃ」と意気込んでいました。これも一種の駆け込み需要でしょうか。

【税理士 米澤 勝】