「書籍」今村英明『崩壊する組織にはみな「前兆」がある――気づき,生き延びるための15の知恵』

 著者が語る「崩壊の前兆」は15。企業進化の過程ごとに,経営破綻につながりかねない危機の前兆が,実例を交えて具体的に描かれていて,実に面白く,あっという間に読みました。著者は経営コンサルタントを経て,現在は大学院で教鞭をとっておられるということで,随所に,若いビジネスマンがこうした前兆に接したときにどのように対処すべきかを述べている点も,類書にはない特徴かと思いました。
 とくに私が共感した部分は,「終わりに」で語られている組織に関する致命的な二つの誤解についてのものでした。それは,
「世の中には,最適な組織や理想の組織があるはず」という誤解
「組織変更は万能薬あるいは即効薬である」という誤解
の二つで,ここから導かれる提言は「決し,理想の組織を求めてはいけない」というものであり,「組織変更は,効き目の遅い,副作用もある治療法だから,組織を変えずに治るなら,別の治療法を探ったほうがよい」というものです。
 この二つの誤解は相互に関係していて,経営者は,「理想の組織」を求めて「組織変更」を繰り返すわけですが,結局,「すべての組織は,暫定的・相対的なものであり,そのときどきの評価基準,つまり何が一番重要化によって,同じ組織が良くも悪くも評価され得る」ということなのでしょう。
【税理士 米澤 勝】