「印紙税の将来を考える」日経新聞朝刊より

 日本経済新聞朝刊の「大機小機」という匿名記事が,印紙税の廃止について言及しています。
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO59218450S3A900C1EN2000/

 国税庁の発表資料では,「印紙収入」として,平成23年事務年度には,1兆468億円余りが計上されており,税収に占める割合は2.4%です。この数字の中には,印紙税として納付されたものはもちろん,登録免許税や訴訟費用として貼付されたものも含まれているということですので,印紙税の廃止が,どのくらいの税収減につながるかは不明です(上記の記事でもそのあたりには触れられていません)。

 印紙税の課税根拠は,「契約書その他の文書が各種の経済取引の表現であり,したがって担税力の間接的表現であることにある(金子宏『租税法(第17版)』664ページ)」とされています。
 また,課税文書を作成すれば,「その基礎にある法律行為の有効・無効にかかわりなく課税要件は充足される(同書665ページ)」ことから,課税文書を作成しなければ,印紙税の課税要件は充足されないところに着目して,昔から,いろんな手段で印紙税の節税が図られてきました。
 契約書を2部作らずに1部にして,先方にはコピーを渡すことにより,印紙税を半分にするとか,ファクシミリやメールで請書を送ることにより,課税文書を作らないとか。そして,もちろん,インターネットを使った商取引も課税文書をというより,文書そのものを作成しないため,印紙税の課税要件は充足しません。

 こうした取引形態の変化から,また,課税文書に該当するかどうかの判定は必ずしも容易でないこともあり,印紙税は廃止すべきであるという主張は,決して目新しいものではありません。
 国税庁発表の資料でも,印紙収入は,平成13事務年度は1兆4,287億円余りで,税収に占める割合が3.0%だったものが,年度ごとに多少のばらつきはあっても一貫して減少傾向にあることが見てとれます。
 小職も基本的には印紙税は廃止に向かうべきだと考えますが,判断が難しいのは,やはり廃止に伴う税収への影響が試算しづらいことに原因がありそうです。
 なお,印紙税に関しては,税理士業務の範囲から除かれています(税理士法第2条第1項)。したがって,課税文書に該当するかどうか,貼付すべき印紙税の額はいくらか,などという質問にお答えすることは,税理士の独占業務ではないので,誰でもできるということのようです。

【税理士 米澤 勝】