[書籍]高田明典『ネットが社会を破壊する』
ネットが社会を破壊する ──悪意や格差の増幅、知識や良心の汚染、残されるのは劣化した社会
- 作者: 高田明典
- 出版社/メーカー: リーダーズノート
- 発売日: 2013/05/10
- メディア: 単行本
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著者によれば,「『ネットが社会を破壊する』というのは,ネット上の様々なサービスによって私たちの社会が変容しているということを意味しており,また同時に,その変容が,好ましくないと思われる方向性を示していること」だということで,本書を読んでいると,もっともだと思う指摘が次々となされています。
たとえば,ネットは増幅装置としての側面を持つが,そこで増幅されるのは,悪意や格差であるということ。もっと悪いことに,汚染装置としてのネットは,おそらく私たち人類にとって最も重要であると思われる知性や良心,精神性や知識を,私たちが気づかないうちに,汚染し続けているということ,などなど。
ネットが社会を変えられない例として,著者は次のように指摘します。
端的に言えば,テレビやネットに触発されて何かをすることなど,検討にも値しない。卑近な例でいえば,「愛は地球を救う」というテレビのキャンペーンに触発されて日本人の多くが募金をするという現象が数十年続いても,地球が救われないどころか,足元の日本さえ酷い状況になっている。個別の番組や映像によって惹起されたあなたの美しい心は間違いではないが,(中略)夏休み後半の停滞期のテレビ視聴率に貢献しただけ。
あるいは,民主主義についての以下のような指摘は,現状に不満を抱えているにもかかわらず,投票に行かない有権者たちのことを暗に言っているのかもしれません。
民主主義というのは,とてつもなく高いハードルを持っている。それは,私たちの一人一人が十分な思考力を持ち,十分な知識を持ち,十分に時間をかけて意思決定するときに飲み,正しく機能するという事実である。この仕組みが人類の歴史の中でこれまでうまくいったためしがないのは,だから,当然である。少なくとも,有権者の7割程度がまともでない限り,この仕組みはうまくいかない。
ほぼ同じ時期に読んだ津田大介さんの『ウェブで政治を動かす!』が,インターネットやソーシャルメディアサービスに対して,きわめて高い可能性を語っていたのに対して,高田教授の論理は,まるで反対であり,その対比が実に興味深く感じた次第です。
- 作者: 津田大介
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/11/13
- メディア: 新書
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