コンプライアンス違反企業の倒産動向調査

 帝国データバンクの調査によりますと,「倒産理由にコンプライアンス違反が確認できた負債額1億円以上の法的整理となった企業」の数は,2012年4月から2013年3月までの1年間に200件となり,調査開始来最高だった2011年度の159件を大幅に上回ったそうです。
帝国データバンクの調査資料はこちら
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p130506.html

 違反類型の上位は,業法違反が60件,粉飾が57件,資金使途不明が25件と上位3類型で全体の7割以上を占めています。脱税を理由にした倒産は5件とここ数年の7〜8件よりも減少傾向にあるようです(理由は説明されていません)。業法違反は,2011年度の20件から一気に3倍に増えましたが,これは,昨年4月のツアーバスによる死亡事故の影響で道路運送法違反,過労防止義務違反などの行政処分を受けた運送業の倒産が相次ぎ,業種別では,「運輸・通信業」で倒産した36件のうち25件が業法違反を理由として倒産したということです。また,建設業は54件中22件が建設業法違反による行政処分をきっかけに倒産しています。

 帝国データバンクでは今後の動向として,次のように締めくくっています。

 今後は,「粉飾」や建設・運輸業の「業法違反」に加え,中小企業緊急雇用安定化助成金などの「不正受給」や消費税法違反などの「脱税」などの取り締まりも厳しくなってきていることを背景として,コンプライアンス違反が高水準で推移していく可能性は否定できない。
 一方,msn産経ニュースは,帝国データバンクの調査を受けて,コンプライアンス違反企業の倒産が増加している理由として,各企業が,コンプライアンスに違反した取引先への対応を厳格化していることを挙げています。
msn産経ニュースはこちら
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130609/fnc13060909000001-n1.htm

 もともと,融資先について行政処分が発表されたり,脱税が報じられたりした場合に,金融機関が新規融資のストップだけでなく貸金の回収を急ぎ,それを引き金に経営破綻に追い込まれる事例はよく知られていますが,一般企業のなかでも,取引先に行動指針の遵守を求め,違反した場合には契約解除の可能性もあるという規定を設けている大企業が増えているということです。

 これまで不問に付されてきた小さな違反が,これまでどおりには許されるわけではないというのは,いろんな事件が教えるとおりです。

【税理士 米澤 勝】