[企業不正]ネットワンシステムズ社による修正申告

 さる3月8日,「当社元社員による不正行為に係わる調査結果にお知らせ」をリリースして,元営業幹部による約7億8900万円の騙取事件を公表していた,東証一部上場の通信システム構築大手ネットワンシステムズ株式会社が,2012年3月期までの7年間について修正申告を行い,重加算税8700万円を含む3億円余りの法人税等を納付したことが一斉に報じられました。
↓ たとえば毎日新聞の記事はこちら
http://mainichi.jp/select/news/20130501k0000m040153000c.html

 本件は不正に騙取した金額が大きいことや一部上場会社で起きた事件であることもあって,リリースを出すたびにマスコミ報道がされています。適時開示を時系列で追いますと,
2月12日「不正行為の判明」に関するリリース
3月8日「調査結果」に関するリリース
5月1日「所得隠し」報道
(未定)「刑事告訴」に関するリリース
という形で,その都度,事件の内容が説明され,会社の信用が少なからず毀損されていくことになります。例えば,今回の報道では,「重加算税が課された」とありますので,この記事を読んだ人は,国税局も悪質性を認めたのだと理解してしまい,「とんでもない会社だ」という感想を持ってしまう可能性が考えられます。
 本来であれば,3月8日の調査結果を公表した時点で,
国税局の指摘にしたがい,すでに修正申告を終えた」
「元社員については詐欺の容疑で刑事告訴を行った」
という発表ができていれば,何度も報道されずにすみ,こうした2次被害をもっと軽減できたはずだと思います。しかし,四半期報告書の提出期限までに調査を終えて財務諸表を修正し,上場を維持することを最優先にした結果,修正申告や告訴手続が後回しにされることは仕方がないのかもしれません。

 なお,本件は,もともと東京国税局の税務調査において,多額の外注費に関する実体が問題となり,不正発覚へとつながったものでしたので,これが「架空」であると認定された時点で重加算税の賦課決定は当然予想されたことであり,そういう意味では昨日の報道には何ら目新しさはありませんでした。
 ネットワンシステムズ社が公表した「調査報告書」には,国税局の調査官を欺くためにどのような策を弄したかが,詳細にまとめられています。
↓ 「当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ」
http://www.netone.co.jp/wp-content/uploads/2013/03/ir_20130308_01.pdf

【税理士 米澤 勝】