[研修]政治資金監査実務に関するフォローアップ説明会

 政治資金監査制度は,「収支報告書のみならず,国会議員関係政治団体の内部資料である会計帳簿や領収書等の現物を含め,外部性を有する第三者がすべての支出をチェックする制度」として,「政治資金の使途に関する国民の不信を払拭するため」に,平成21年度の収支報告書から導入されたものです(『政治資金監査に関する研修テキスト』より一部抜粋)。
 小職も制度実施以前から政治資金適正化委員会が実施する研修を受け,「登録政治資金監査人」として名簿に登載されていますが,今のところ,(幸か不幸か)監査実務にかかわった経験はありません。
 制度そのものに関する問題点は,当初から指摘されていました。当ブログでも,東京新聞の記事を引用する形で,監査が名ばかりになっていること,監査人の外部性に疑義があることなどを指摘しました。http://d.hatena.ne.jp/takanawa2009/20100908
 制度導入から丸3年が経過して,今年もフォローアップ説明会が開催され,小職も,昨日,霞が関総務省へ赴き,受講してきました。例年,地下2階にある説明会会場は,登録番号順に座席が指定されておりましたが,今年は自由席で,開催時間が近づいても空席が目立ちます。
 説明会自体は,非常に細かい改正点に関するものであり,フォローアップ説明会の開催が必要なのかどうか疑問に思えるほどの内容でした。また,「政治資金監査報告書の作成等に関し特に留意すべき点について」もかなり時間を割いて説明がありましたが,その内容は,
 記載した日付の整合性が取れていない
 政治団体の名称が略称で記載されている
 監査人の自署押印が徹底されていない
 根拠条文番号の誤り
 実際の監査における確認事項と報告書記載の不一致(これが最も多いようです)
など,およそ,職業専門家である登録政治資金監査人を集めて説明する内容とも思えず,いささか拍子抜けした次第です。

 当日は,たまたま,民主党の前原国家戦略担当相の政治団体が,秘書の自宅を主たる事務所として届け出て,事務所費を支払っていたとする産経新聞の報道があり,報道を読む限り,またしても,政治資金の使途が問われる事態になりそうです。
MSN産経ニュースはこちら ↓
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121029/trl12102907060001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121029/trl12102908150002-n1.htm
 報道が正しいとすれば,2009年,2010年の収支報告書については,政治資金監査が実施されているはずです。
 昨日の説明会でも,「政治資金監査は政治団体の主たる事務所において」行うことが求められていること,主たる事務所以外の場所で監査を行った場合には,実施場所の特定とともに,「なぜ主たる事務所以外の場所で実施する必要がったのかを具体的に記載すること」が求められていることが説明されていました。その趣旨からすれば,前原大臣の政治団体の監査を担当した監査人が,この事務所で監査を実施していれば,「事務所の実体」があるかどうかは容易に判明するはずです。が,残念ながら,報道には政治資金監査については,まったく言及がありません。もちろん,説明会の場で,この報道に関する適正化委員会からのコメントもありませんでした。
 事務所費の支出が不適切なものであれば,前原大臣の責任問題は免れないでしょうが,せっかく,政治資金監査制度という「世界にも類を見ない制度(前出のテキストより)」の運用が始まっているのですから,この制度がどう機能していたかの検証も,政治資金適正化員会の役割ではないかと思います。例えば,前原大臣の政治団体の監査を担当された監査人が,前原大臣またはその政治団体とどのような関係を有しているのか,どのような政治資金監査を行ったのか,報告書の記載はどうなっているのかなど,報道よりも掘り下げた検証をし,これを公表することによって,,政治資金監査制度を実効性あるものとして定着させることが必要ではないでしょうか。

【税理士 米澤 勝】