[話題]富士通株式会社第112回定時株主総会

 朝,新横浜駅周辺にA4サイズの道案内を持って立つ多数の男性社員が目につきました。クールビズはいいけど,今朝の気温だと半袖はちょっと寒そうな感じが。
 というわけで,お土産の羊羹目当てで,今年も富士通株式会社の株主総会に出席しました。会場はいつもの通り,新横浜プリンスホテルです。

 定刻の午前10時に始まった総会は,まず,小倉監査役から監査報告があり,事業報告をナレーションに委ねる形で,議案の説明,質疑へと流れます。事業報告が短かったせいか,この時点でまだ40分足らず。今年は,スーパーコンピュータ「京」が1位に座を譲ったこと以外にさしたる話題もなく,軒並み赤字決算に喘ぐ電機業界にあって,年初計画を下回ったとはいえ,黒字を計上しているゆとりからか,あるいは株主総会も3回目を迎えた余裕からか,山本社長の議事進行もスムースで,「意外と早く終わるかも」と思いながら,株主の質問が始まります。
 2人目の株主さんから,「企業不祥事が相次いでいるが,富士通は大丈夫なのか? 監査役の口から言ってほしい」という質問があり,小倉監査役が答弁したかと思えば,6人目の株主さんからは,「社外監査役の口からも聞きたい」ということで,山室監査役が「株主代表訴訟リスクを踏まえたうえで,富士通取締役には,法令・定款に違反する事実はない」と答えるなど,昨年の大王製紙事件やオリンパス事件を受けて,株主も質問せざるを得ないというところでしょうか。
 コンプライアンスやコーポレート・ガバナンスに絡んでは,どこかで,前社長の解任に対する質問が出るかなと思っておりましたが,もう終わったことだからでしょうか,株主からも,回答をされる役員からも,この話題は出ませんでした。
 山本社長からは,「スーパーコンピュータでは再び世界一を目指す」「世界一が目標ではなく,世界一速いコンピュータに何ができるのか,世の中を変えることを考えたい」といった発言や,らくらくスマートフォンの新製品を引き合いに,「会場へおこしの株主の皆様もだいぶお年をおめしですので,ぜひお試しください」などと笑いを誘い,また,FTAに対しては明確に賛同の意思を示すとともに,業績には追い風になると断言されるなど,かなり具体的なお話もあり,会場からは,拍手や笑いといった反応がありました。
 最後の質問にします,と山本社長が指名した株主さんの質問はユニークで,山本社長も「予想外の質問です」とおっしゃって,苦笑していました。
質問はこうです。

 総会における決議は,インターネットや事前の委任状などによる議決権行使で大勢は決していて,ここで,拍手によって承認され,『賛成多数として原案通り可決成立』というのはおかしいのではないか。せめて,「すでに賛成○○反対○○で,原案通り可決成立しておりますが,会場のみなさんの賛同を得るため,拍手をお願いします」ということなら納得できるのだが。
 株主さんの容姿までは確認できなかったのですが,声の調子からは比較的若いかんじで(それまでの質問者はどう考えてもリタイアした中高年の男性ばかりでした),なるほど,面白いことをいうものだと思いました。現在の株主総会のスタイルは,総会に大多数の株主が出席して,そこで議決をするという建前からできているわけですが,実際には,ここで,全員が反対といったところで,既に集計された「賛成多数」という事実は変わらないわけです。
 山本社長はこの質問に対して,「会場の拍手は,私たちの議案に対する承認と激励の意味があると考えており,拍手を求めたい」というもので,直後の,第1号議案「取締役12名選任の件」の採決の際には,拍手とともに,会場からは失笑もあったのですが,3本議案の採決は粛々と行われ,11時45分には,山本社長が閉会を宣言しました。

 入場の際に渡された手提げ袋の中には,羊羹の他に,富士通グループのFDK製の乾電池が2箱と小ぶりサイズのうちわが入っておりました。

【税理士 米澤 勝】