[お知らせ等]税務弘報2012年7月号――本日発売です。
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2012/06/05
- メディア: 雑誌
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私たち税理士は,「租税関係法令に適合した範囲内で依頼者にとってより有利な税理士業務の方法を選択すべき義務がある(東京地裁平成9年10月24日判決)」とされているように,「税金の負担を軽減するためにどうすべきか」という方向で,事案の検討を進めることが習性のようになっていますが,果たしてそれでいいのか,というのが編集部の問題提起です。編集部のリードを引用します。
会社を存続させるため,“削れるものは何でも削れ!”。このコスト削減ミッションに「節税」も当然に含まれています。数多の節税指南書やインターネットで紹介されている,単に「納税額を減らすこと」だけを目的としたスキームが果たして有効か。そこで,本特集では「節税」にとらわれすぎて,事業にかえって不利益を与えかねない「会社をダメにする節税」を取り上げ,実務上の注意点を解説しています。
小職への依頼は,「組織再編税制」に絡んで,国税当局から追徴処分を受けている事例を解説してほしいというものでした。組織再編税制は,平成13年度に改正された税制で,何より,「包括的否認規定」を有するという点で,組織再編税制を利用した租税回避行為に対して,課税当局がどのような判断をするかが大いに注目されてきた税制でもあり,また,ヤフーの組織再編成をめぐる国税局との対立やパチンコ業界における大胆な租税回避スキームは,新聞や週刊誌でかなり報道されていましたので,これらの事案を中心に,原稿をまとめました。
結論としては,法人税法132条の2で,「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとき」は,「税務署長の認めるところにより,法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる」という包括的な否認規定が設けられている以上,組織再編の合理性,事業目的との適合性などが主張できない,「単に納税額を減らすこと」だけを目的とした組織再編行為は,否認されるリスクが大きい,というものです。もちろん,包括的な否認規定には,「税負担の不当な減少」という不確定概念に基づく課税であることから,納税者の予測可能性,法的安定性の面からの批判はあるところですが,明文上の規定がない「私法上の法律構成による否認」とは異なるものであることを心がけなくてはいけないと思います。
ヤフーの組織再編をめぐる税務訴訟の動向についても,注視していきたいところです。
小さくて見づらいかもしれませんが,表紙に小職の名前が記載されています。
↓中央経済社さんのHP
http://www.chuokeizai.co.jp/tax/201207/zeimukoho201207.html
【税理士 米澤 勝】