[お知らせ等]税務弘報2012年4月号――本日発売です。

税務弘報 2012年 04月号 [雑誌]

税務弘報 2012年 04月号 [雑誌]

 当職が,税務弘報誌上で昨年より連載させていただいておりました『企業内不正発覚後の税務』は,2012年2月号でいったん終了させていただいたのですが,今月,その番外編という格好で,オリンパス社の粉飾決算事件について,税務の視点を交えて寄稿させていただきました。
 ご案内のように,同事件については,取締役,監査役および会計監査人に対する責任調査委員会報告が公表されており,今後,同種の事件が発生した際に,取締役らの法的責任を追及できるかどうかを検討するうえで,ひじょうに参考になる論理が展開されております。
 当職の論考は,オリンパス社が公表してきた第三者委員会,責任調査委員会の報告書を参考に,これらの報告書では触れられていない,「粉飾決算による税負担の増加」という側面から,いくつかの論点を検討をしたものであります。ただし,オリンパス社は,有価証券報告書だけを訂正したものであり,会社法決算,法人税の申告などを修正したわけではないため,法人税の取り扱いは未だ確定していないものと考えられます。
 たとえば,訂正有価証券報告書には,下記のような記述が見られます。

 上記(引用者注:繰延税金資産および繰延税金負債をいう。)には金融資産の損失の分離および解消にかかる処理を訂正したことにより発生したものが含まれるが,訂正報告書提出日現在において,法人税の取り扱いが未確定であり,一時差異として取り扱われるか否か不明である。

 さて,当職の原稿はさておき,今月の税務弘報は大変充実しています。

 ひとつめは,消費税の95%ルールについての特別企画です。
 平成24年4月から開始する新事業年度において,もっとも大きな変更を強いられるのが,課税売上割合が95%以上で,かつ,年間課税売上高が5億円を超える事業者に対する,いわゆる「95%ルール」の廃止です。これまで,課税売上割合が95%以上であれば,課税売上高に関係なく,課税仕入れに係る消費税額等の全額が仕入税額控除の対象となっていた制度を改められたため,課税売上高が5億円を超える事業者は,個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを選択する必要があります。
 そして,よく知られているように,一般的には,個別対応方式を選択する方が消費税に納付額が少なくなる傾向にあるため,事務処理は煩雑になりますが,個別対応方式に対応できるよう,これまで以上に課税売上と課税仕入れ等との関係をきちんと把握しておく必要に迫られている,というのが実務の現状です。
ということで,税務弘報4月号の特別企画は「95%ルール見直し・社内研修対策」として20ページ以上を充てています。とくに,設問形式の「課税仕入れ区分トレーニング」は,判断に迷うような支出項目が適度のおりまぜられていて,税務担当者にとっては,自らの理解力を試すには格好の教材になっています。

 ふたつめは,別冊付録の「法人税申告書の書き方」です。214ページのボリュームは,本誌の168ページを大きく水をあけてしまいました。
内容はまだ拝見していませんが,普段あまり使わない別表が必要になったときには重宝してくれそうです。

 そして,特集の「更正の請求」も押さえておかなければならない平成23年度の重要な改正点であり,時宜にかなった特集となっているようです。ぜひ,確定申告業務が終わったら,じっくり拝読したいと思います(例年,こう思いながら,3月15日が過ぎると忘れてしまうのですが)。
↓ 中央経済社HP
http://www.chuokeizai.co.jp/tax/


 冒頭のオリンパス事件に話を戻しますと,東京地検特捜部は,菊川前会長らを金融商品取引法違反容疑で再逮捕し,さらに取り調べを続けることにしたようです。 
↓ msn産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120304/crm12030410390001-n1.htm

 最初の逮捕容疑が平成19年3月期と平成20年3月期の有価証券報告書虚偽記載で,再逮捕の容疑は平成21年3月期以降3年度分の有価証券報告書虚偽記載ということのようです。菊川元会長ら4人が東京地検特捜部に,指南役とされた3人が警視庁捜査2課に逮捕されたことの謎解きが,勾留期間が終わったころにはなされるのではないかと期待しておりましたが,どうやら,先送りになりそうです。

【税理士 米澤 勝】