[お知らせ等]税務弘報11月号――本日発売です。

税務弘報 2011年 11月号 [雑誌]

税務弘報 2011年 11月号 [雑誌]

 中央経済社が発行する「税務弘報」の連載第3回となる11月号は,「社内横領事件と損害賠償請求権」をテーマに,社員の詐取行為が発覚した後の税務上の取扱いを考察しています。
中央経済社HP
http://www.chuokeizai.co.jp/tax/

 会社法の制定,金融商品取引法に規定する内部統制報告制度などにより,法制面の要請から,社内不正を防止し,あるいは発見する体制は整えられつつあるのは間違いのないところですが,適時開示情報やマスコミ報道からは,決して不正が減少しているとは思えないところです。
 今月は,経理部長が長年不正な支出を繰り返していた法人が,税務調査をきっかけにその不正が発覚し,その後,税務署から更正処分を受けた事例を対象に,不正な支出の損金算入の是非,経理部長に対する損害賠償請求権の収益計上時期などを,課税庁の主張と学説などを紹介しながら,検討したものです。
 また,この事例もそうなのですが,会計監査を受けることが義務づけられている上場企業であっても,私たち税理士が決算や税務申告を受任している法人であっても,なかなか外部の職業専門家が企業内の不正を発見するのは難しいわけですが,今月の論考の後半では,税理士の不正発見責任についても,判決文を紹介しながら検討しました。

 今回採り上げた事例は,たまたま,知り合いの弁護士が第1審の原告(納税者)側代理人を務めていたこともあって,妙に事件〈というよりは原告側の主張というべきでしょうか〉に対する親近感が湧いてしまい,裁判所の判断についてかなり批判的な論調を展開しています。ただ,損害賠償請求権を益金として課税するにあたって,担税力について考慮しないで判断されてしまうと,その収益計上時期によっては,賠償金を受け取れるかどうかわからない状況で,法人税だけは先に納付しなさいということになるわけで,納税者の経済実態からは受け容れがたい場合もあるのではないかと思う次第です。

 当初3回の予定でスタートした本連載ですが,編集部のご厚意で,もう少し続けさせていただくこととなりました。そこで,第4回目以降の予定ですが,
12月号 反社会的勢力に対する経済的利益の供与
2012年1月号 架空増資〈不公正ファイナンス
について,検討します。
 ご興味をお持ちいただけましたら,書店で手に取っていただければと存じます。


【税理士 米澤 勝】