[話題]サッポロホールディングス株式会社第87回定時株主総会

 12月決算法人の株主総会も,今日あたりが大詰めでしょうか。
 本日,恵比寿ガーデンホールで行われたサッポロホールディングス株式会社の定時株主総会に出席してきました。昨年までは,筆頭株主であったスティール・パートナーズとの経営権をめぐる,さまざまな確執が取りざたされ,マスコミによる報道も多かった同社株主総会でしたが,スティール・パートナーズが全株式を手放した今年の総会は,終始和やかな雰囲気で行われました。さすが,消費者相手の企業だけあって,出席された株主数の多さには驚きました。
 冒頭,議長である村上社長から東日本大震災に関するお見舞いの言葉があり,それに続いて出席者全員が黙とうを捧げます。震災の影響に関する簡単な説明の後,議事に入るわけですが,スクリーンに投影した資料にナレーションが重なる業績の報告はお決まりのとおりで,単調なナレーションが眠気を増幅します。
 質疑応答までで約50分。ほぼスケジュールどおりでしょうか。質問も,今回の震災に関連する項目が多くありました。「こんな場ですので義援金の額は申し上げませんが」と説明した議長に対して,「ホームページで公表しているのだから」と言って,質問の中でそれが5千万円であることを指摘した株主さんもおられましたが,全体として,被災地・被災者に対する支援は継続的に行っていくが,企業としてはあまりそれをアピール材料には使いたくない,という感じの口調でご説明されていたのが印象に残っています。
 質問の中で気になったのは,ベトナムでのビジネスの進捗状況と旧大阪工場跡地の売却に関するものでした。寡聞にして知らなかったのですが,ベトナムは韓国とタイに並び,既にアジア第3位のビール消費国(中国,日本が1位,2位)だそうで,少子高齢化が進む日本市場は先細りであるため,10年くらいで日本市場を上回る可能性があるとのことでした。そんな国への進出を「肉食系」という,たとえを交えて,説明されていました。また,大阪府茨木市にあった工場の跡地は,立命館大学に売却したそうで,自社中心での再開発を断念した要因の一つとして,リーマン・ショックをあげ,また,開発にかかる時間の長さ,不稼働資産を抱えるリスクよりは資金を獲得することを選んだという説明は,震災を経た今となっては,ますます納得できるものがありました。
 質問者8名というのも,ほぼ想定の範囲でしょうか。拍手により5つの議案すべてが可決され,開会から1時間45分で閉会が宣言されました。
 デフレ傾向が続く中,増益基調の実績を上げたうえ,ポッカコーポレーションの買収(子会社化)という,課題であった非ビール事業以外の事業分野へのてこ入れの方針がはっきりしている中での株主総会とあって,また,もちろん,スティール・パートナーズがいなくなってくれたことも基因して,議長役の村上社長の口調もずっと落ち着いたものであり,質問者もサッポロ・ブランドに惹かれて株を持っていることが口調からわかる人が多かったせいか,回答する経営陣にも余裕があったように思われます。
 ともあれ,今夜は,お土産としていただいてきたサッポロ黒ラベルとエビスビールをいただきます。これで,スティール・パートナーズが売却した後,低迷が続いている株価が少しでも上昇してくれれば,株主としては言うことはないのですが。
 被災者のみなさんに配慮しつつも,今夜くらいは慰労会をやっているはずの,サッポロホールディングス株式会社の株主総会運営スタッフのみなさん,ご苦労さまでした。

【税理士 米澤勝】