[税務争訟]年金払生命保険金の税務上の取扱いの変更

「今月下旬」と予告されていた政令が改正され,国税庁から,今日,政令,取扱通達の変更,税務署からのお知らせなどが発表されました。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/topics/data/h22/sozoku_zoyo/index.htm

生命保険会社からの通知も本日以降開始されるようですから,受領した方は,まず,「必要なお手続き判定表」を参考に,還付の有無,どういう手続きが必要かを検討する必要があります。生命保険会社から通知が届きましたら,確定申告書の控えなどを準備したうえで,YES/NOで判定できるようになっています。
↓ 「必要なお手続き判定表」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/topics/data/h22/sozoku_zoyo/pdf/tetsuzuki.pdf
ここでのポイントは3つ。
1 平成17年分から,年度ごとに判定する必要があること
2 確定申告で所得税が全額還付されていても,住民税や国民健康保険料が減額される場合があること
3 本来,確定申告が必要であったにもかかわらず,していなかった人の中には,所得税は還付されるが,住民税や国民健康保険料が増額される場合もあること
いずれも,還付金額や減額または増額される住民税の額等は,確定申告書の控えや生命保険会社からの通知書,源泉徴収票,保険料控除証明書などをもとに,11月以降利用できるという国税庁の「保険年金の所得金額の計算のためのシステム」も利用して,実際に税額計算を行ってみないと確定できません。

なお,「よくあるご質問」の2番目に,「相続財産の合計額が基礎控除額以下だったために相続税の申告をしていないが,対象となりますか」という質問に応えて,国税庁は,「年金受給権は,相続税の課税対象となって」いて,「実際に相続税の納税額が生じなかった方も対象となります」と,当然の答えを書いていて,個人的に少し,うけました。
本件変更のきっかけとなった最高裁判所における弁論で,国側の代理人は,
「上告人には相続税が課税されていないわけであるから,本件処分により本件年金に所得税を課すことが実質的・経済的にみて二重に課税をすることにはならない」
と強弁しておりまして,課税されているかどうかと納付税額があるかどうかを意図的に混同した主張をしていたわけですが,ここで,その主張の誤りを自ら認めたわけです。

さて,国税庁からこうして取扱いの具体的な変更が示されて気になるのは,税理士会の動きが見えないことです。筆者の所属する東京税理士会からは,本件変更に伴い,更正の請求または確定申告が必要になる納税者を支援するために,どのような施策を検討しているのか,まったく情報が伝わってきません。
本来ですと,本日の国税庁からの公表に合わせて,「年季保険二重課税ホットライン開設のお知らせ」などがリリースされ,その前提として,会員に対して「ホットライン従事者の募集」などの告知がなされていてしかるべきだと思います。何もしていないとは考えられないのですが,残念ながら,動きが遅いようです。
対象件数が最大で9万件,還付税額も90億円に達する見込みと報じられていますように, 税理士が大いに社会貢献を行うべき場面であると思います。

(米澤勝)