未成年者の飲酒による事故

1月6日付の東京新聞朝刊社会面に,痛ましい事故の記事がありました。
「列車にはねられ男子高校生死亡 赤羽駅ホーム」
という見出しだけなら,気にもとめずに読み飛ばしていたでしょうが,気になったのは,こんな記事でした。

 警視庁によると,男子生徒は高校の友人二人と5日夕から渋谷の飲食店で酒を飲み,帰宅途中に気持ち悪くなって赤羽駅で下車。ホームに四つんばいになり,線路の方に頭を突き出して吐いていて列車にはねられたという。
言うまでもなく気の毒な事故であり,亡くなられた高校生の無念さやご両親の気持ちを思うとまことに心が痛みます。

酒を提供した渋谷の飲食店の責任,赤羽駅の駅員さんはどうしていたのか,ホームには他のお客さんはいなかったのか,一緒に飲んでいた友人はどうしたのか,など,疑問はいくつもありますが,私の最大の疑問は,「酒を飲んではいけない」ことを教えるのは必要だとしても,「飲酒が人体に及ぼす影響」や 「万一,お酒を飲んでしまった場合にはどう行動すればよいか」などについては,どういう教育がされているのだろうかということでした。

それは,翌日(1月7日),同じ東京新聞の海外面にこんなニュースが載っていたことでさらに強まりました。
「ヘロインの安全な打ち方」「N市の冊子に批判集まる」

ニューヨーク市が中毒者向けに「ヘロインの安全な打ち方」記した冊子を作製していたことが分かり,「違法薬物の使用を奨励するものだ」と批判が高まっている。

冊子は市健康局が3万2000ドルをかけて7万部を作製。市議や麻薬取締局(DEA)幹部らが「初心者への指南本になる」と批判,回収を求める騒ぎとなったが,市側は「回し打ちによるエイズウィルス「HIV」感染などの危険を少しでも減らすために作製した」などと弁明している。

「弁明」という表現に記事を書いた加藤美喜記者もNY市に批判的なのかと思ったりもしますが,私は,麻薬中毒患者を根絶できないまでも,せめてHIV感染や誤った麻薬使用で命を危険にさらすことのないよう,この冊子作製に踏み切ったNY市に拍手を送りたいと思います。

冊子では,「異常が起きたときのために他人と一緒に打つこと」なども奨めていたようですが,赤羽駅で事故にあった高校生も,「もし飲酒してしまった場合は,親に連絡し,謝罪したうえで,迎えに来てもらうこと」とか,「気持ちが悪くなった人がいた場合には,必ず誰かが家まで送っていくこと」などの教育を受けていれば,こうした痛ましい事故を防ぐことができたのではないかと考えた次第です。

もちろん,未成年者の飲酒を容認する意見でないことは,私も弁明しておきます。

(米澤勝)