日本航空再建問題,会社更生手続き利用か

JALの法的整理案、国交相と主力銀行首脳が協議=関係筋 - ロイター

日本航空(JAL)再建で、支援を検討している官民共同出資の「企業再生支援機構」が法的整理案を主力銀行団に提示したことを受け、前原誠司国土交通相みずほコーポレート銀行などの主力銀行の首脳が29日午前、意見交換のために会談した。銀行団は前原国交相に対して法的整理によるJAL再建案に対して慎重な姿勢を伝えた。複数の関係筋が明らかにした。
会合には、前原国交相みずほコーポレート銀行三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の頭取ら首脳陣に加え政府系の日本政策投資銀行など主力取引銀行が顔をそろえた。支援機構は28日午前と午後の2回、主力銀行の幹部らに会社更生法によるJALの再建策の概要を説明したが、主力銀行首脳陣らは前原国交相に対して法的整理による再建策は、すぐには受け入れられないとする意見を表明した。私的整理と比べると、法的整理案は、透明性が図られるメリットがある半面、金融機関が被る損失額が大きく膨らむと見られるためだ。
会社更生法手続きを利用すれば、経営者の更迭や担保権者の権利変更などを実施しやすい上、裁判所の定める管財人の下で、経営の連続性を断ち切って再生を図るたことで、JALの複雑な労組問題や路線の改廃が実施しやすくなるとみられる。また、年金債務の圧縮も理論上進めやすくなる。一方で、燃油の購入などが現金取引になるたため、運行の継続には巨額の現金を準備する必要があるとの指摘も出ている。


今までJALの再建にあたっては事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を利用した任意的な手続きにより行われるとの観測が一般的でしたが,ここに来て法的手続き,それも会社更生手続きを利用したものになりそうです。

任意整理の場合と異なり,会社更生の場合,経営の最終責任者は裁判所が選任する管財人が行うこととなり,今までの経営に対する責任が明確となるでしょう。また,担保権者(特に銀行等金融機関)を手続きに取り込む(具体的には担保権の実行が禁止される)点では,任意整理や,法的整理のうち民事再生とも異なる最大の長所とも言えます。

しかし,法的整理を行った場合には,一般的に任意整理の場合に比べて負債のカット率が上昇することから,最大の債権者である金融機関は最後まで反対することが予想されます。また,法的整理となった場合には掛取引ができなくなり,現金での取引をせざるを得ないため,多額のつなぎ融資が必要となり,政府保証等どこまで国が介入すべきか,日本航空の存在意義とも絡めて問題となるでしょう。

いずれにせよ,日航の必要性にまで遡った議論がなされることが必要ではないかと感じています。

(阿部憲太郎)