衆院選小選挙区は「違憲」…大阪高裁判決

http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20091228-OYO1T00710.htm

8月30日に投開票された衆院選小選挙区で、議員1人当たりの有権者の格差(1票の格差)が最大2・30倍だったのは憲法違反だとして、大阪府箕面市の男性が府選管に選挙無効(やり直し)を求めた訴訟の判決が28日、大阪高裁であった。成田喜達(きたる)裁判長(菊池徹裁判長代読)は「格差が2倍を超える状態を放置するのは立法府のあり方として憲法上許されない」として「違憲」を宣言したうえで、選挙自体については「無効とした場合、公の利益に著しい障害が生じ、公共の福祉に適合しない」とする事情判決の法理を適用し、原告の請求自体は棄却した。1994年の小選挙区比例代表並立制導入後、衆院選が「違憲」とされたのは初めて。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091228-OYT1T00851.htm

判決の要旨は以下の通り。
1 本件選挙においては、小選挙区選出議員1人当たりの有権者数の最大格差は、最少選挙区を1とすると、平成20年9月2日現在で2・255倍であり、投票当日現在で2・304倍であったと認められる。
2 憲法に定められた選挙権は、多年にわたる人類の努力と民主政治の歴史的発展の成果の現れで、議会制民主主義の根幹であり、その歴史的発展を通じ一貫して追求されてきたのは、投票の場面で国民は完全に平等視されるという理念で、憲法は選挙権に関し徹底した平等化を志向し、投票の価値の平等をも要求すると解される。
その前提の下で、選挙制度の仕組みの決定は、国会の合理的な裁量に委ねられているが、選挙制度自体以外に関する政策を考慮に入れるべきではない。いわゆる1人別枠方式は、従来の著しい格差を改善させる方式として、いわば過渡期の改善策としてそれなりの合理性と実効性があったが、国会議員を地域代表と理解するもので、全国民の代表者とされている憲法43条1項の趣旨にも反しており、このことは、遅くとも本件選挙時までには明らかになっていたと認められる。
3 近時たびたび投票行動により政治情勢が大きく変化し得ることが目の当たりに経験され、格差が2倍に達するような事態は、大多数の国民の視点から耐え難い国民の間の不平等と感じられてきており、客観的にも著しい不平等と評価される。
4 本件では、2倍を超える格差があったことが歴然としており、この格差は、1人別枠方式という憲法の趣旨に反するに至った選挙区割りの選挙方式により生じたと認められるから、本件選挙は違法との評価を免れない。
ただし、本件選挙を無効とした場合、公の利益に著しい障害が生じることは明らかで、原告の受ける損害等を考慮しても公共の福祉に適合しないと認められるから、行政事件訴訟法31条1項前段の趣旨に準じて、原告の請求を棄却する。


衆院選において,現行の小選挙区比例代表並立制が導入される以前の中選挙区制における定数配分規定では,最高裁違憲判決が2回出ていますが(1976年,1985年),現行制度では初の違憲判決です。

本来であれば一人一票の原則からして2倍を超える格差は当然に平等原則に違反するはずなのですが,最高裁をはじめとする裁判所は,選挙制度の仕組みについての決定を国会の広範な裁量に委ね,あまり積極的な判断をしてこなかった傾向があります。しかし,今後は憲法上の原則である平等選挙の観点を重視した選挙制度が求められるのは当然の成り行きだと思われます。この点,現行制度では各都道府県に最低1議席を割り振っているのですが,複数の都道府県をまとめて1議席割り振ることも考慮すべきでしょう。

(阿部憲太郎)