偽装請負,黙示の『雇用契約』認めず…最高裁,地位確認を棄却

http://osaka.yomiuri.co.jp/eco/news/20091219-OYO8T00218.htm

パナソニックの子会社「パナソニックプラズマディスプレイ」(大阪府)の茨木工場で働いていた元請負会社社員の吉岡力さん(35)が「偽装請負の状態で働かされた」として、プラズマ社に従業員としての地位確認などを求めた訴訟の上告審判決が18日、最高裁第2小法廷で開かれた。中川了滋裁判長は、吉岡さんに従業員としての地位を認めた2審・大阪高裁判決を破棄、地位確認や未払い賃金の請求を棄却した。


判決全文は下の最高裁HPにあります。
平成20(受)1240号平成21年12月18日最高裁判所第二小法廷


偽装請負や偽装出向が違法な労働者派遣の形態として社会問題となってますが,このような場合,業務(本件ではプラズマディスプレイの制作等です。)委託の委託先と労働者との間に雇用契約が成立するのではないかが争われた事案です。原審の大阪高裁は業務委託の受注先と労働者の間で締結されている雇用契約(実質的には派遣登録)が無効であり,業務委託の委託先(労働者の就労先)と労働者との間で黙示の雇用契約が成立している,という画期的な判決をしたのですが,最高裁はそのような黙示の雇用契約は成立していないとして,労働者に対する慰謝料のみ認めました。

派遣労働が一定期間経過した場合には,派遣先の会社は一定の場合に派遣労働者を直接雇用する旨の努力義務(労働者派遣法40条の3),及び雇用契約の申込義務(同法40条の4)が発生するのですが,派遣先会社と派遣労働者との間で直接雇用契約が生じるとする旨の規定は現行の労働者派遣法にはありません。諸外国(ドイツ・フランスなど)では労働者保護の観点からこのような直接の雇用契約を法律上発生させる旨の規定があり,法解釈でこのような義務を生じさせるのは現行法上無理があることから,早急な立法による解決が必要と思われます。

(阿部憲太郎)