あるグラビアアイドルのストリップ劇場出演を撮影した写真の雑誌への掲載について差止めを求めた判例

判例時報2053号65ページ以下に掲載されていた判例です。グラビアアイドルだったK氏(イニシャルに深い意味はありません。)が覚せい剤取締法違反で執行猶予の判決を受けた後ストリップ劇場に出演した際に無許可で撮影された写真の雑誌への掲載を禁止する仮処分決定に対して,雑誌を発行する出版社が異議申し立てをした事案で,東京地裁は仮処分申立てを任用した原決定を相当とする決定をしました。

人は誰でもむやみに自分の容姿を撮影されず,また自分の容姿を撮影された写真を無断で公表されない人格的利益を有しています(これを一般に『肖像権』と言います。)。今回の決定は,このような肖像権に基づいて出版禁止の仮処分を認めた点に意義があるとされています。

裸の写真を許可無く公表されることを許す人はほとんどいないので,その点,本件決定の結論そのものについては妥当ではないかと思います。しかし,本件は対象が週刊誌だったのですが,発売当日に仮処分の申立てを行ったものの,仮処分決定が出たのが翌週の当該雑誌の発売日であったことから,実際にはこの週発売号の雑誌が完売したそうです。従って,仮処分決定は無意味なものとなってしまっています(ただ,後に慰謝料請求を行う場合に今回の仮処分決定が意味を持つことはありうるところではあります。)。仮処分を申し立てるのは結構大変なものがあるのですが,今回のようなケースを見ると,実行あるものとするために迅速な審理判断が要求されなければならないことを感じます。

また,今回の決定において,「債務者(雑誌を発行する出版社のことです。)がその出版する図書に債権者の承諾なく盗撮した写真を掲載した記事を載せることは,専ら性的関心に応えることを主たる目的とするものであり,およそ,憲法21条1項の定める出版の自由の保護の名に値しない行為」と判示している部分があるのですが,性的関心に応える内容の記事であっても言論・出版の自由の範囲内のはずであり,多少疑問に感じるところでした。

(阿部憲太郎)