[研究会]租税訴訟における税理士補佐人制度創設から10年の検証

 先週の金曜日,東京税理士会館で行われた日本税務会計学会訴訟部門の研究会「補佐人制度創設から10年の検証――実際に関与した事例から役割を考える」を聴講しました。講師は鳥飼総合法律事務所に所属する税理士の原木規江先生。原木先生は,当日参加しておられた朝倉洋子先生によると,TAINS(税理士情報ネットワーク)に収録されている補佐人が関与した事件451件のうち134件,約30%の事件を担当しておられるということで,まさに,税理士補佐人制度を語るにはうってつけの存在です。
 10年を振り返る企画ですから,講義は創設されるに至った経緯,司法制度改革審議会の意見書や衆議院における委員会審議などの資料を紹介しながら,現行税理士法2条の2がどういう趣旨で立法されるに至ったのかを,解説するところから始まりました。
 当時,税理士登録をしていたとはいえ,筆者は一介のサラリーマンでしたから,このあたりの事情にはまったく疎く,たいへん興味深く原木先生の解説を拝聴しました。

 原木先生がご準備された資料の中に,税理士法を解説した日本税理士会連合会編集の『新税理士法』(平成14年初版)があり,その44ページでは,税理士法2条2項に規定する「租税に関する事項」を以下のように解説しています。

なお,「租税に関する事項」には,税務官公署に対する申告等又は税務官公署の調査若しくは処分に関する事項などの行政事件訴訟のほか,税理士が税法適用誤りをした場合の損害賠償請求訴訟,国税債権不存在確認訴訟,国家賠償請求訴訟,相続争いにおける租税に関する陳述等が含まれる。

 筆者は,同じ事務所の弁護士を代理人とする民事訴訟で,弁護士である訴訟代理人が提出した補佐人選任が認められ,弁論準備期日に出席して発言することを許された経験を有していますが,当該事件は相続争い(生前贈与による不動産登記の取消請求事件)であったことから,この「相続争いにおける租税に関する陳述等」の「等」に含まれて,裁判長が補佐人としての出廷陳述を認めたるものなのだろうか,などと考えました。

 原告である納税者が勝てないと言われ続けてきた租税訴訟ですが,原木先生の推計では,この10年間で補佐人が関与した事件の勝訴率は27.4%となっているとのことで,個人的には予想以上に健闘しているという印象がありました。

 質疑応答では,補佐人としての報酬はどれくらいなのかという質問が会場から出て,原木先生は,ご自身は法律事務所に勤務されているということで個別事件ごとの報酬はもらっていないとしながらも,訴額が1億円くらいにならないと報酬としてはペイしないこと,原告である納税者との契約は,弁護士の契約とは別になるのではないかという見解をお示しいただきました。
 補佐人制度が認知されてきていることは間違いないのですが,その報酬をめぐる議論はまだまだこれから深まるのではないかという印象を持ちました。

【税理士 米澤 勝】