生活保護支給を開始するよう『仮の義務付け』命じる決定…那覇地裁

http://www.saga-s.co.jp/news/global/corenews.0.1549295.article.html

那覇市内に住む70代の女性が、生活保護の申請を却下した同市の処分取り消しなどを求めた訴訟で、那覇地裁田中健治裁判長は13日までに、女性の申し立てを受け、生活保護を仮に開始するよう命じる決定をした。昨年12月22日付。
重大な損害を避けるために緊急の必要性がある場合に認められる「仮の義務付け」規定に基づく決定で、女性の代理人弁護士によると、生活保護受給をめぐる訴訟で認められたのは初めてという。
決定によると、女性は、国の関係機関が年金受給者を対象に行っている制度を利用し、年金を担保に現金の貸し付けを受けた。昨年6月に生活保護を申請したが、原則として同制度利用者には保護を適用しない国の通知に基づき却下された。
決定理由で田中裁判長は「女性が生活費や家賃が著しく不足する困窮状態にあったのは明らか」と指摘した上で「制度利用はやむを得なかった」と判断。昨年12月からの生活扶助月額約4万〜約5万4千円などを仮に支給するよう命じた。


行政事件訴訟法37条の5は,生活保護支給にかかる義務付け訴訟(生活保護受給申請を一旦は役所によって却下されたものの,必要と認められる場合に判決によって役所に対して生活保護支給を開始するよう命じる判決を求める訴訟)を提起した人が,1日も早く生活保護を受けなければ償うことの出来ない損害が出てしまうような緊急の必要がある場合に,仮にその支給を開始すべき旨の決定を出して,役所にその支給を行わせる制度です(これを『仮の義務付け制度』といいます。)。

このような仮の義務付け決定は今まであまり認められた例がありませんでした。利用された主なケースとして,公立の保育園や幼稚園への就園を何らかの理由で拒否された児童について,緊急に就園する必要から(小学校にあがる年齢になるまで待っていたのでは間に合わないため)この制度による決定に基づいて就園が認められたのがあるくらいです。上記記事にもありますが,生活保護支給ではおそらく初のケースだと思われます。

しかし,本件における高齢者の場合,日々の生活を支える唯一の収入が生活保護支給しかないことは明らかであり,具体的な事情を審理判断の上,このような決定を行ったことについては評価されるべきだと思います。

東京地方裁判所平成18年01月25日決定

(阿部憲太郎)