民法改正論議が本格化

民法改正を議論するために法務省内に設置された,法制審議会民法(債権関係)部会第1回会議が平成21年11月24日に開催され,その議事録などが法務省のホームページに公開されています。


法務省


今回の民法改正は明治時代に制定されて以降,2004年に行われた現代語化を含めても若干の修正にとどまっていた債権法分野の抜本的改正を目指すものです。その眼目は,明治時代に制定された民法が,その後は裁判例をによって実質的な修正が施されているものの,そのために民法の条文だけではルールの全体像がはっきり掴めないことから,裁判例で示されたルールを条文にすることによりルールの明確化を図る点にあります。それと共に,リース契約など現代社会において幅広く利用されている契約の民法典における位置づけを明確にすることも目的として挙げられています。

今回の第1回会議においては,改正検討事項の一例をメモ形式で公表していますが,全部で31項目の論点が指摘されています。しかしながら債権法分野における検討事項はこれに尽きるものではなく,代理制度全般,あるいは不当利得・不法行為制度についても当然検討されるべきであり,また,商取引法の分野や,消費者取引の分野の規定を民法に盛り込むか等,今後も検討事項は増加することが予想されます。

また,参考資料についても法制審議会以前に議論の中心であった改正検討委員会が発表した「債権法改正の基本方針」(NBL904号)のみならず,改正研究会「日本民法典財産法改正 国民・法曹・学会有志案(仮案)」(法律時報増刊「民法改正 国民・法曹・学会有志案」所収)や,時効研究会「時効研究会による改正提案」(別冊NBL122号「消滅時効法の現状と改正提言」所収)などにも触れられており,さまざまな議論を参考にしていこうという法務省の意思が感じられます。

いずれにせよ,真に使いやすくわかりやすい法律となるよう,時間をかけてじっくり議論を行った上での改正がなされればと思います。

債権法改正の基本方針 (別冊NBL no. 126)

債権法改正の基本方針 (別冊NBL no. 126)

消滅時効法の現状と改正提言 (別冊NBL (No.122))

消滅時効法の現状と改正提言 (別冊NBL (No.122))

(阿部憲太郎)