[書籍]山口利昭『不正リスク管理・有事対応――経営戦略に活かすリスクマネジメント』

不正リスク管理・有事対応--経営戦略に活かすリスクマネジメント

不正リスク管理・有事対応--経営戦略に活かすリスクマネジメント

 前回に引き続き,山口利昭弁護士の近刊を取り上げます。320ページにわたり,山口先生から企業経営者に対するメッセージが並びます。それは,

 どんな組織にも不祥事は必ず起きる。だから,発生頻度を低くし,早期に発見し,あるいは信用低下を最小限に抑えるためには,平時から何をすべきか。
ということです。

 繰り返し強調されているのが,「コンプライアンスを秤にかけてはならない」という言葉です。
コンプライアンスを企業収益と秤にかけて考えてしまえば,それは優先順位の問題となってしまいます。そうではなく,コンプライアンス経営判断の前提条件として,コンプライアンスと利益獲得の双方を満足させるような経営判断をしなければならない,と解説されています。

 次いで,行政機関による事前規制の時代と,事後規制中心,原則主義の規制手法が採用されている現在においては,経営者の意識にも変革が求められているとして,日本型経営の成功体験に立脚して,リスク管理を前向きに捉えられない経営者に警鐘を鳴らしています。
 こういうことです。

 社会の変化に伴い,昨年までは世間から非難されなかった企業行動が,今年は非難される,という事態も想定される
 本書は,こうした山口先生の問題意識が全編に溢れた,たいへん読み応えのある内容になっています。先生は,企業経営者に読んでもらいたいとして書かれているようですが,実際には経営トップをサポートする立場の経営幹部のみなさんがお読みになって,経営トップに意見を具申する際の指針にされるのに,最適ではないかと思料する次第です。

【税理士 米澤 勝】