[書籍]鹿田良美・出川洋・丸田隆英著「税理士・春香の民法講座」

 8月の新刊ということですが,清文社編集部の方のご厚意で頂戴しました。監修が青山学院の三木教授。執筆を担当された3人の税理士さんのうち2人は,三木教授が立命館大学で教鞭をとられていたころの院生だそうです。
 今日,日帰りで片道1時間余りの場所へ行く用事があって,その往復の道程で読んだのですが,所長先生と春香さん,山川くんという3人の会話で,税理士業務と民法の関わりを解説しようという試みは,よくできていると感じました。あいにく,三木教授が創造主である春香さんが活躍する他の書籍を読んでいないので,他との比較はできないのですが,まじめで勉強熱心な春香さんの姿には好感を持ちました(実際にここまで勉強できるかといわれると返事に困りますが)。

 内容的に,相続事案と土地をめぐる契約が頻出しているのが気になりましたが,それだけニーズの高い事案であるということなのでしょう。個人的には,マンションの管理組合が「人格のない社団等」として法人税の申告の税義務があるところ,民法上の組合は,組合の収支が,組合員個人の収支になると,さらっと書かれた事例(第9話)あたりは,もっと掘り下げた解説が欲しかったところです(自分で調べます)。

 本書は,「厳選した税法と民法の接点34事例を税理士が税理士のために『会話形式』で『わかりやすく』解説!(本書の帯広告(腰巻き)の文章より)」したものであるということです。税理士は7万4千人くらいいるそうですから,そのうち,5パーセントの人が本書を買ってくれたら,清文社さんにとっては大成功というところかな,などと考えますが,実際には,税理士事務所にお勤めの勉強熱心な税理士志望者のみなさんがターゲットになるのかもしれません。税理士は,たぶん,「税理士のための」と書かれた本はあまり読まないのではないでしょうか(小職だけかもしれませんが)。

【税理士 米澤 勝】